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対談ログ(2023/5/13up)

個展『Relevant』関連イベント

登壇者:篠田優(写真作家・Alt_Medium)・片柳拓子

開催日:2023年4月8日

篠田:よろしくお願い致します。

今回の「Relevant」展は片柳さんにとって4回目の個展になりますね。まずは展覧会の形式についてお聞きしたいと思います。

片柳:今回の展示では、A4縦位置、三段掛け168枚を使用しています。

篠田:過去の展示を振り返ると

2021 possession / IG Photo Gallery  A0ノビ12点・額装A3ノビ1点

2022 impersonation / Alt_Medium A0ノビ7点・額装A3ノビ4点

2022 Baundary / PHOTO GALLERY FLOW NAGOYA A4縦位置二段掛け 128枚

2023   Relevant / Alt_Medium  A4縦位置三段掛け168枚

このように変化し、特に名古屋での展示以降、写真の枚数がかなり増えている。なぜそのように構成を変化させたのでしょうか?

片柳: IG Photo Galleryでの展示はホワイトキューブ的空間で、A0ノビというサイズを引きで見たり寄って見たりと、身体的に自由に歩き回ってみることができました。対して名古屋の会場は、展示当時は中心にテーブルがあり、その周りを周遊してみる環境でした。その為、異なるスタイルで展示をした方が良いと考えてA4 二段掛けで展示をすることに決めました。

篠田:Alt_Mediumという会場は、比較的に身体を動かしながら見ることができる空間であると思うのですが、名古屋での展示方式の延長線に今回の展示を構成したのはなぜですか?

片柳:2022年のAlt_Mediumでは、大きな作品(A0ノビ)と額装(A3ノビ)という、2つのサイズを並べることで見え方が異なるのではないかという提示をしました。そこから、会場の制約からA4二段掛けにチャレンジをしました。今回はその流れを踏まえて三段で展示してみたいなと思ってしまった。つまり、名古屋の経験から進化させた展示をしたいと考えて、A4 三段掛けをすることを決めました。

 

篠田:A4二段掛け→A4 三段掛けに変化したことに対して、「進化」という言葉を使われましたが、それは前回よりもよりよくなっているととらえているのでしょうか?

片柳:進化というのが正しいのか、ブラッシュアップというのが良いのかわかりませんが、同じ会場を選んだからこそ、そこで新しい見え方を提示したいと考えたのです。

現時点では作品枚数を多く見て頂くのは良いことだとは思っているのかもしれません。今回、展示会場で来場者の方から「A0ノビのように大きなプリントになったとき何をどう見てよいかわからなかった。今回の複数枚の組み合わせの方が見やすい。」とコメントを頂きました。つまり、枚数が多いことにより、作品とみる人が結びつくポイントが増え、作品とコンタクトしやすくなったのかもしれません。反対に「写真の枚数が多いからどう見て良いかわからない」という方もいらっしゃいました。これにより一定の見方で固定することなく多く並べたからこそ、作品と来場者一人一人が異なる視点を持つからこそでてきた言葉なのではないかと受け取りました。

篠田:私はどちらかというと、この展示構成は、あえてメッセージを読み取りにくくしているのではないかと思いました。この展示にはなにか意味のようなものが込められているのでしょうか?

片柳:写真を見る、物を見る、街を見る。「見る」とは、人は興味がある事しか見ていないのではないだろうかと思うのです。この会場で、例えばAさんとBさんが話したときに、あの写真の「あの写真」の存在に片方の人しか気が付かないことがあるのではないかと思うのです。

篠田:片柳さんのいう「見る」とは、いわゆる視覚一般の事を指しているのでしょうか?

片柳:視覚について興味があります。写真になったときそこに存在している物は、生き物なのか置物なのか。本当に食べることができる物なのかと考えています。写真は物の表層を写しとる記録行為。そこに写し出されたイメージから読み取る情報は何かと考えています。

篠田:Boundary展と今回の展示で明確に異なる点はどんなところにあるのでしょうか?

 

片柳:撮影期間が異なるということです。撮影のスタイルは変えていません。

確かに、タイトルをつけて展示や本にまとめて区切りをつけていると思います。現時点では、過去に展示で使用した写真は使わずに構成しています。つまり、まとめられたごとに撮影期間が異なる。ちなみに、現時点では特定の場所などに絞って撮影したものでまとめていません。名古屋で展示した写真は名古屋で全て撮影したものかといったら違います。写真のセレクトは、タイトルを決めてからしています。

 

篠田:どうやってタイトルを決めているのですか?

 

片柳:タイトル探しは、本、会話、何かを見に行ったときに気になった言葉をメモして集めています。常に探しています。

 

篠田:タイトルというのは作品を読み解くための重要な手がかりですよね。

展示これまでのタイトル、possessionは「所有」、impersonationは「なりすまし」、Boundaryは「境界」、そしてRelevantは「関連する」というような意味です。

そうしたキーワードが含まれている写真が並んでいるということなのでしょうか?そうだとすればタイトルが異なる展示に出展した写真を、他のタイトルの写真群に組み入れることはできるのでしょうか?

 

片柳:現時点では入れることはありませんが、入れ替えることはできるかもしれません。

写真は組み合わせによって意味がかわるから。異なるイメージの結び付きを生むので、入ることは可能かもしれません。

 

篠田:では、タイトルを置き換えることは可能ですか?

 

片柳:それは難しいかもしれません。タイトルを考えながら選ぶので。

タイトルを決めて、セレクトをして展示空間を作り、そこに来場者との対話によってはじめてタイトルが生きてくるのではないかと思っているところがあります。

 

写真家と写真作家

 

篠田:片柳さんは、写真家と写真作家という言葉を使い分けていますが、「写真作家」というのはどのような人たちを指しているのでしょうか?

 

片柳:写真を使い、「まだ見ぬ世界」を作っている人のことを写真作家と思っています。例えば、本を編むように展示を編んでいるというか…。ただ、このように問われると意外と曖昧に「写真作家」という言葉を使ってしまっているだけだと思います。

 

篠田:つまり、複数の写真を関係させて意味を紡ぐのが写真作家であるということでしょうか?

 

片柳:そうかもしれません。以前、写真評論家のタカザワケンジ氏が「作品1つ1つが星のようなもので、いくつかの星が繋がって星座になるように、バラバラに見えていた作品が繋がって作家の世界が見てくる」と話されていたので、それが写真作家なのかなと思っています。

 

篠田:写真を複数でとらえる際には、展示のほかに書籍という手段もありますよね。

片柳さんにとってその両者に重要度の違いはありますか?

 

片柳:展示もZINE制作のどちらも大切にしています。ただ、もしかすると展示の方が重きを置いているかもしれません。本は一定の流れで見がちであるけども、展示になることでそこから離れてく。写真の見え方が変容するのが興味深いです。

 

篠田:ただ、これだけ頻繁に本を出すということは、本というかたちに対する執着がかなり強いのではないのでしょうか? 薄い小冊子というかたちではなく、より厚い、たとえばハードカバーの写真集として作品を集約することを考えることはありますか?

 

片柳:私は、写真の世界に入るきっかけは、雑誌に掲載されている「写真」を見ることから入り、「撮る(撮影)」に興味を持ちました。そこから「展示で見る写真」という体験。続いて、「写真集で写真を読む」を知りました。

写真集を見る(読む)行為を楽しいと思い始めたのはここ数年なので、製本された写真集にするイメージをまだ持っていない。写真集にするのもチャレンジしてみたと思い始めたところです。

 

篠田:現在毎月、写真冊子の発刊を続けられていますが、それと同様に毎月展示をしたいと思いますか?

 

片柳:実際できるかどうかは別ですが、興味はあります。以前、小松浩子さんが月一回展示していたのを知り凄いなと。とても興味深い行為だと思ったので。

 

篠田:これまで、ルールを決めて作品をつくろうと思ったことはありますか?例えば、タイポロジカルに撮るといったような。

 

片柳:厳格なルールで撮ることにチャレンジしましたが、得意ではなかったです。ルールを決めて撮る事よりも、コンパクトなカメラで多様なイメージを探す方が私には向いていると思っています。

 

篠田:現在の撮影スタイルを続けるということは、スナップショットを今後も貫きとおすということでしょうか。言い換えればスナップ撮影と心中するというように。

 

片柳:確かにもうスナップと心中しているかもしれません(笑)

 

篠田: 片柳さんの作品を見ていると中平卓馬の後期作品を思い浮かべることがあります。それは、縦位置のカラー写真という表層的な面での類似もありますが、むしろ、写真群が本や展覧会という形式を当てはめることによってシリーズとして切り分けられている点においてです。

 

片柳:ZINEを作って気が付いたのは、撮影初期の作品を近々に撮影したものが混ぜられませんでした。なので、一見変わってないように見えるスタイルではありますが、時間が経ったときにそこに写る時代の変化が見えるかもしれないと思います。

 

篠田:そうであれば、私の中平的な読みは若干的外れているともいえますね。今後、カメラやモチーフ、手法を変えていく可能性もありますか?

 

片柳:この作品をスタートする以前は富士フイルムX-E2を使用していました。しかし、撮れない時期があり、そこから、現在使用しているSony RX100Ⅲを使い始めたのです。なので、撮影のスタイルに変化がなかったわけではありません。そして、まだ展示をしてまだ3年目です。なので、これから先もしかしたらこれから、動画、コラージュなど新しい表現を発表するかもしれません。

片柳拓子個展『Relevant』

会期:2023年4月7日〜19日

会場/Alt_Medium(東京・高田馬場)

 

関連イベントトークショー

2023年4月8日 18:00-18:45

登壇者:篠田優・片柳拓子

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